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よもやま世間小噺(6) =断捨離の嵌まる落し穴=

01月15日
 終活(終末期活動)の一貫として捉えられ、身の回りの身辺整理の方法としても近年流行りの処世術となって、「断・捨・離」の流儀が話題を集めているところですが、その語源を辿ってみると、「(煩悩)を断つ」さらには「(煩悩)を捨てる」とか「(煩悩)から離れる」等の動詞の漢字の頭文字だけを拾って並べた形のものである中でも、「断捨離」を進めることにより、「我執」を克服して悟りに至るというヨーガの基本原理を表す言葉のようなのです。これを進めていけば、日常の束縛感から解き放たれて、自由なより良い境地に導かれる…則ち自分の「来し方」を整理していけば、これからの「行く末」の展望が拓けてくるというカラクリのようです。

 そこには「自我」の解放による「自由」を謳歌できる展開の未来予想図が描けそうな意味合いになりますが、こうした哲学的な解釈とは別に、一般的には身の回りの「物」を整理し捨て去ることで、身軽になろうと薦める整理整頓術と解釈され、巷に流布する契機を作った経緯があるようです。ところが転じて身辺整理の本筋を突き詰めていくと、詰まるところ自分自身が何者かを判じ得なくなり、トドの詰まり自分を棄て去ることに帰着点がいくんじゃないかという「落とし穴」が待ち構えているようです。

 そうした「断・捨・離」の作業過程においては、読み溜めた書籍を売り払ったり燃やしたりし、或いは施設や学校等に寄付することで、身辺から手放して知的財産を葬り去り、日記帳やら文筆簿等の心の変遷を記したメモすらシュレッダーに掛けたりして、自分のみ続けた轍をも消し去る終活作業を熟しているうちに、自らの「来し方」や懐かしくも愛おしい「思い出」までもが切り離されていきながら、自分史を遺すエンディングノートすら放棄されて意味を為さぬ顛末に至る曉には、親しかった人間関係も疎遠に導かれることになりそうです。深い疎外感と喪失感に覆い尽くされ、虚脱に陥りつつ、全身的な廃用症候群を伴うフレイル状態と共に、訳の分からぬ不穏状態に苛まれてしまうのです。そうです。頗る合理的な筈の「断捨離」の果てに、極めて非合理な形のなれの果てと云える「自我の喪失」というべき「落とし穴」に嵌まってしまうことになるのです。
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